いつものように
高木浩光氏の日記を読んでいて、そこで紹介されていた
「高森太郎の日記。」の論評を見たところ、ちょっと違和感が。
高森氏の日記では
自分には、「新聞の文化欄で紹介してやるんだから、ただで使わせろ。新聞と言うのは文化の担い手なんだよ」というような横暴な意味でしか伝わってこない。
という書かれ方をしていた
産経新聞の元記事ですが、私は「現在はテキストコンテンツ以外のコンテンツ(図版・漫画・映像など)に関する『引用』の基準が明確でないため、批評等の目的でそれらのコンテンツを使用することが事実上困難になっており、それを避けるためには明確な基準作りが必要なのではないか?」という問題提起だと解釈しました。
元記事も新聞の文化欄に問題を限定しているわけではなく、冒頭で子供文化の歴史を紹介する本の例を紹介しているように、一般的な問題としてこの問題を取り上げているのではないかと思うので、高森氏の意見はちょっと穿ちすぎではないかと。
実際私も自分の書く記事の中で、総務省の審議会の資料や学会論文などから図版を引用するようなケースが時々あるんですが、出版社によっては「テキストの場合は出典を明示すれば事前了解無しに引用できるが、図版の場合は事前の了解無しには掲載できないので図版は使わないで欲しい」と言われたりすることが。
そういう時は仕方ないので図版無しで原稿を書くわけですが、これなんかはまさに著作権法で言うところの引用に関する「公正な慣行」が、テキストコンテンツ以外を対象とする場合には事実上存在しないことの表れではないかと。
そもそも日本の著作権法では「『公正な慣行』に合致し、引用の目的が正統な範囲内であれば、
著作権者の許諾を得なくても、著作物の一部(または全部)を自分の著作物の中で引用することができる」ことになっているのに、この「著作権者の許諾を得なくても引用ができる」ということを知らない人が多すぎるんですよねぇ。あと「引用」と「転載」の違いをわかってない人も多いです。
例えば漫画の世界では「
脱ゴーマニズム宣言訴訟」で、著作権者の事前了解がなくても、出典元を明示するなど一定の要件を満たせば引用が認められるという判決が下っているのに、未だに小林よしのり氏は「漫画の世界では『引用には事前承諾が必要』というのが業界の常識だ」などと主張されているわけですが、こういった混乱があることが出版社を萎縮させ、「事なかれ主義」で図版等の引用を回避し、ますます図版等の引用に関する『公正な慣行』の成立を妨げてしまう、という悪循環を生んでいることは否めないわけで。
これに対し「
何とか引用に必要な『公正な慣行』を漫画等についても確立すべきではないか」というのが産経新聞の元記事の趣旨ではないかと。この意見に対し、私個人としては
全面的に賛成します。
ただこの記事が、
連邦×産経事件でおなじみの産経新聞に載ったというのは、何とも皮肉としかいいようがないなぁ、と。その意味では高森氏の反応も理解できなくはないんですよね。
高木浩光氏もそのあたりを意識してか、同コラムのパロディを書かれてますが、これが見事にツボを突いてます(笑) ぜひ高木氏の日記で一読されるのがよいかと。